結婚は価値観が合うからうまくいくのではない――違いを受け入れ、認め合うことが幸せな結婚の鍵――

「価値観が合う人と結婚したい」

婚活をしている方から、よく聞く言葉です。プロフィールの希望条件にも「価値観が合う人」「気が合う人」と書かれているのを目にします。しかし、仲人として多くのご縁を見届けてきた私から言わせていただくと、結婚は“価値観が合うから”うまくいくのではありません。むしろ、結婚は「価値観の違い」を前提にし、その違いをどう受け入れ、認め合えるかで成り立っていくものなのです。

価値観が合う人なんて、本当にいる?

そもそも、価値観がぴったりと合う人なんているのでしょうか。答えは「いない」と言ってもいいかもしれません。
なぜなら、人は皆、まったく違う環境で育ってきたからです。

生まれた家庭の文化、親の教育方針、兄弟との関係、学校生活、友人とのつながり、社会に出てからの経験…。一人ひとりが、固有のストーリーを背負って生きています。そんな二人が出会い、一緒に人生を歩もうとするのですから、考え方や感じ方が違うのは当然のことです。

例えば、お金の使い方ひとつとっても違います。毎月きっちり家計簿をつけて貯金を重視する人もいれば、体験や楽しみにお金を使うことに価値を感じる人もいます。休日の過ごし方もそう。家でのんびり過ごしたい人と、外に出てアクティブに過ごしたい人とでは、どちらが正しいということはありません。ただ「違う」だけなのです。

違いは衝突にもなるけれど、成長のきっかけにもなる

多くのカップルが最初にぶつかるのは、この「違い」です。
「どうしてわかってくれないの?」
「普通はこうするでしょう?」
こうした不満や苛立ちは、たいてい“自分の価値観”を基準に相手を測ってしまうところから生まれます。

しかし、違いは衝突の種であると同時に、成長のきっかけにもなります。自分とは異なる考え方や習慣に触れることで、視野が広がり、自分の価値観を見直すチャンスになるからです。

結婚は「自分の価値観を押し通す場」ではなく、「違いから学び合う場」です。お互いの違いを理解し、「なるほど、そういう考え方もあるのね」と受け止められる関係性こそが、長く続く結婚生活を支えます。

幸せな夫婦に共通すること

仲人として、多くの夫婦を見守ってきました。幸せな結婚生活を送っている方々に共通しているのは、“相手を尊重する姿勢”です。

例えば、あるご夫婦は「食事の好み」がまったく違いました。奥様は洋食派、ご主人は和食派。最初は外食のたびに意見が分かれ、喧嘩になることもあったそうです。ですが、「たまには相手の好きなものを食べに行こう」と歩み寄るうちに、お互い新しい味覚を知ることができました。今では「違う好みがあったからこそ、楽しみが倍になった」と笑って話されています。

また別のご夫婦は「時間の使い方」でよく衝突していました。ご主人は計画的に動きたいタイプ、奥様はその日の気分で動きたいタイプ。最初は予定を立てるごとに揉めていましたが、やがて「一緒に過ごす時間そのものが大切なんだ」と気づき、お互いのスタイルを尊重するようになりました。今では、予定を決めるときに「今日はあなたに合わせる日」「次は私に合わせる日」とルールを作り、穏やかに過ごしています。

こうしたご夫婦の姿から学べるのは、「違いがあるからこそ、お互いを思いやる工夫が生まれる」ということです。

「価値観が合う人」を探す婚活の落とし穴

婚活をしているとき、多くの方が「価値観が合う人がいい」と考えます。しかし、その考えに固執しすぎると、せっかくのご縁を逃してしまうことも少なくありません。

たとえば「旅行好きじゃない人は合わない」と条件を絞ってしまうと、本当は素晴らしいパートナーになれるかもしれない方との出会いを自ら狭めてしまいます。旅行に興味がない相手でも、一緒に行くことで新しい楽しみを見つけられるかもしれません。

つまり、「価値観が合う人を探す」婚活よりも、「価値観の違いをどう受け入れられるか」を考える婚活のほうが、実は成婚への近道なのです。

結婚は「違って当たり前」から始まる

結婚とは、違う人生を歩んできた二人が出会い、これから新しい家庭を築いていく営みです。違いがあるのは自然なこと。その違いをなくす必要はありません。むしろ、「違って当たり前」という前提に立つことで、相手を受け入れる心の余裕が生まれます。

結婚生活では、時に意見が食い違うこともあります。そのときに「あなたは間違っている」と否定するのではなく、「あなたはそう考えるんだね」と認めること。これが、幸せな夫婦関係を築く最も大切な姿勢だと思います。

最後に

婚活をしている皆さんへ。
「価値観の合う人」を探すより、「価値観の違いを受け入れられる人」と出会うことを目指してみてください。お互いの違いを尊重し合う関係は、決して楽な道ではないかもしれません。でも、その先には、深い信頼と絆で結ばれた、本物の夫婦の姿があるはずです。

結婚は、価値観をすり合わせていく「共同作業」。違いを恐れず、違いを楽しみ、違いから学ぶ――それが幸せな結婚生活を育てていくのです。